本記事では、懲戒解雇の理由をランキング形式でまとめています。
- 懲戒解雇になったけど、自分の処分は妥当なんだろうか?
- どんなケースが懲戒解雇になり得るの?
こんな疑問にお答えします。
当サイトの管理人です。大変お恥ずかしい話ですが、筆者は過去に勤めていた会社を懲戒解雇された経験があります。その後は無事に再就職に成功し、現在ではキャリアカウンセラーとして解雇になった方のキャリア支援を行っています。
いざ自分が懲戒解雇されてみると、他にも同じ境遇の人がいないか気になりました。
- 自分と同じ理由で懲戒解雇になった人はどれくらいいるんだろうか?
- そもそも自分が懲戒解雇されたのは正当な理由なんだろうか?
周りと比べても仕方ないんですが、なかなか現実が受け入れられず、こんなことばかりネットで探してしまった記憶があります。
そこで本記事では、実際に懲戒解雇に多い理由をランキング形式でまとめてみました。
- 1位:横領
- 2位:無断欠勤
- 3位:重要機密事項の漏えい
- 4位:重大な経歴詐称
- 5位:痴漢行為で逮捕
- 6位:飲酒運転で逮捕
- 7位:死亡事故
- 8位:取引先からの裏金受領
- 9位:反社会的勢力との交友
- 10位:暴力・傷害行為
記事内では、懲戒解雇になったそれぞれのケースについて細かく解説していきます。
また懲戒解雇にはならなくても気を付けたいケースや、懲戒解雇になった場合の対処法についても経験談を踏まえてお伝えしています。
懲戒解雇からの再起を目指す方は、ぜひ参考にしてみてください。
▼懲戒解雇から再就職を目指すポイントは以下の記事でまとめています。
懲戒解雇の理由ランキングベスト10
懲戒解雇に多い理由ランキングは以下のとおりです。
☑懲戒解雇に多い理由ランキング
順位 | 内容 | 懲戒解雇になった割合 |
1位 | 横領 | 75.9% |
2位 | 無断欠勤 | 74.1% |
3位 | 重要機密事項の漏えい | 69.4% |
4位 | 重大な経歴詐称 | 60.2% |
5位 | 痴漢行為で逮捕 | 59.7% |
6位 | 飲酒運転で逮捕 | 59.4% |
7位 | 死亡事故 | 52.0% |
8位 | 取引先からの裏金受領 | 50.3% |
9位 | 反社会的勢力との交友 | 49.2% |
10位 | 暴力・傷害行為 | 47.7% |
参考資料:一般社団法人労務行政研究所「企業における懲戒制度の最新実態」
調査対象:全国証券市場の上場企業3794社と、上場企業に匹敵する非上場企業1600社の計5394社
調査期間:2023年4月10日~7月5日
集計対象:回答のあった225社
1位:横領(75.9%)
懲戒解雇にするとの回答が一番多いのは横領でした。
横領については、規律の厳しい会社だと、金額の多寡を問わず懲戒解雇とされてしまうこともあります。
2位:無断欠勤(74.1%)
懲戒解雇にするとの回答が二番目に多いのは無断欠勤でした。
無断欠勤については、2週間以上の無断欠勤では7割以上の会社で懲戒解雇としているようです。
3位:重要機密事項の漏えい(69.4%)
懲戒解雇にするとの回答が三番目に多かったのは機密情報の漏えいでした。
これは過失の場合ではなく、意図的に重要機密情報を漏らしたケースが想定されています。
4位:重大な経歴詐称(60.2%)
経歴詐称で懲戒解雇となるケースも多いようです。
これは「業務に重大な支障を来す経歴詐称」とされていて、どの程度の査証なのかによって処分の重さは変わってきます。
5位:痴漢行為で逮捕(59.7%)
満員電車での痴漢についても、懲戒解雇にするとの回答が多くありました
ただし警察に逮捕されていて、かつ自身が認めている場合が想定されています。
6位:飲酒運転で逮捕(59.4%)
飲酒運転での逮捕でも懲戒解雇とする会社が多いようです。
特に飲酒運転後、物損事故などを起こして発覚するケースが多いようです。
7位:死亡事故(52.0%)
身近なとこでも起きやすい自動車による死亡事故も懲戒解雇とする会社が多いようです。
もっとも今回の調査では、営業外勤者が業務中に事故を起こし、本人に過失がある場合を想定されていました。
事故の内容や状況によって処分内容も変わってきそうです。
8位:取引先からの裏金受領(50.3%)
取引先から私的に裏金を受け取っていたケースでも、懲戒解雇とする会社が多いようです。
もちろん金額にもよると思いますが、「謝礼金」などの名目でのやり取りが問題視されることもあります。
9位:反社会的勢力との交友(49.2%)
コンプライアンスに厳しい昨今、反社会的勢力との交友が発覚しただけでも懲戒解雇とする会社が多いようです。
10位:暴力・傷害行為(47.7%)
暴力事件や傷害事件を起こした場合でも懲戒解雇になりそうです。
こちらも行為の内容や被害の重さによって変わってきます。
その他の懲戒解雇になり得るケース
ランキングには載っていませんでしたが、ほかにも以下のような理由で懲戒解雇になることがあります。
悪質なセクハラ、パワハラ
刑事事件に発展するレベルのセクハラやパワハラであれば、懲戒解雇の理由になり得ます。
具体的には、強制わいせつ罪やPTSDによる傷害罪などで被害届が出されるようなケースです。
ちょっとした嫌がらせレベルでは、解雇まで及ぶことはほぼありません。ただ、セクハラ・パワハラは社会問題なので、懲戒解雇の事例が少しずつ増えています。
業務命令違反
会社からの指示に従わなかった場合、「業務命令違反」として懲戒解雇になるケースがあります。
具体的には、以下のような場合が考えられます。
- 業務命令に背いて出勤しない
- 休日出勤や時間外残業を拒否
- 嫌いな業務を行わない
ただし、会社の秩序を乱すような相当悪質なものでなければ、懲戒解雇とまではならないことが多いでしょう。
会社の誹謗中傷
ネットの掲示板やSNSなどで会社の誹謗中傷を行っていた場合、懲戒解雇になるケースもあります。
著しく損害を与えるような書き込みをした場合、「威力業務妨害」などの罪に問われることもあり得るので要注意です。
取引先との不倫関係
一般的に、社内不倫では、職場内で不埒な行為に及んでいた場合や会社の信用に影響する上位の役職者であったような場合でなければ、懲戒解雇になることは多くありません。
ただし、会社の利益に直結するような取引先の相手であれば話は別。
企業秩序や信頼に傷をつけたと判断されれば、懲戒解雇になる可能性はあります。
禁止された副業発覚
割と最近多いのが、社内規約で禁止された副業の発覚です。
いきなりレッドカードとなるとは限りませんが、在籍している会社に損害を与えたり、顧客を奪ったりするような場合は懲戒解雇とされる可能性があります。
懲戒解雇の理由になる法的根拠
懲戒解雇は言わずもがなですが、会社員への処分で最も重いものです。
なので当然、会社としてもちょっとやそっとの理由で懲戒解雇にすることはできません。
使用者からの申し出による一方的な労働契約の終了を解雇といいますが、解雇は、使用者がいつでも自由に行えるというものではなく、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、労働者をやめさせることはできません(労働契約法第16条)
出典:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」
懲戒解雇を行うには、あらかじめ就業規則に懲戒の種別と事由を明記しておき、労働者に周知しておくことが必要となります(最判平成15年10月10日労判861号5頁[フジ興産事件])。
懲戒解雇にはなりにくい理由
会社内でのトラブルはたくさんありますが、処分の中で最も重い懲戒解雇は、そう簡単に下せるものではありません。
以下のような理由だけでは、懲戒解雇にはならないこともあります。
- 上司の指示に背いた
- 遅刻や早退が多い
- 職場内での不倫
- けんか
- 私生活上の非行
- 兼業などの従業員規則違反
上司の指示に背いた
上司の指示に対して、反対の意見を述べたり、異を唱えたりしただけでは、懲戒解雇までは難しいでしょう。
結果として会社に大きな損害を与えれば何らかの処分は免れませんが、それも社内での立場やこれまでの実績で変わってきます。
一方で意図的に業務を放棄して、会社に大きな損害を与えたような場合には懲戒解雇が有効となってしまうこともあります。
遅刻や早退が多い
遅刻や早退が多いというだけでは、いきなり懲戒解雇までは難しいことが多いでしょう。
何度注意されても治らなければ、徐々に重い処分とされるのが一般的です。
もちろん、お客様対応が主の業務などでは、大きな悪影響を及ぼすので、担当から外される可能性が高いでしょう。
職場内での不倫
最近やたら世間の目が厳しい不倫ですが、職場内で不埒な行為に及んでいた場合や会社の信用に影響する上位の役職者であったような場合でなければ、さすがに懲戒解雇までは難しいことが多いようです。
ただし、先ほども説明したように取引先や顧客が相手の場合には、厳しい判断となることもあります。
とはいえ立場や発覚の経緯、逢瀬の回数(場所)によっては懲戒処分の対象にはなってきます。
職場内でのけんか
対等な同僚同士のけんかであれば、その態様がとくに悪質でなければ、懲戒解雇までは許されないことが多いでしょう。
ただし、上司から部下に対しての暴力で支配していたようなケース、部下が正当な上司の業務命令に対して暴行をしたようなケースでは、懲戒解雇が有効とされる余地があります。
私生活上での非行
逮捕されて有罪となったような場合であっても、それが私生活上ことに留まり、業務と関連しない場合には、懲戒解雇が許されないことがあります。
会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価されることになります。
兼業などの規則違反
就業規則違反の兼業があっても、直ちに懲戒解雇できるとは限りません。
それでも何かしらの処分にはなる可能性があるので、面倒でも一度従業員規則には目を通しておいた方が良さそうです。
また、労務提供に支障が生じている場合、競業する事業をしていた場合などには、懲戒解雇が有効とされてしまうこともあるでしょう。
懲戒解雇になりそうな場合の対処法
万が一懲戒解雇になりそうだったら、黙って受け入れるのではなく、諦めずに何らかのアクションを起こしましょう。
- 労働組合に相談
- 弁護士など専門家に相談
上記のようなといった対処法が考えられます。
事情が受け入れてもらえれば、懲戒解雇より軽い諭旨解雇に変更してもらえるかもしれません。
筆者もダメ元で社内の労組に掛け合ってみました。結果としては会社の処分が覆ることはなかったですが、何もしないよりは後悔もなかったです。
法的に懲戒解雇が認められないことを説明していくことで、懲戒解雇を撤回してもらい、合意退職に変更してもらえることもあります。後悔しないためにも、早めに何らかのアクションを起こした方が良いでしょう。
☑リバティ・ベル法律事務所が運営する「身近な法律情報誌 リーガレット」の不当解雇ページ
懲戒解雇になったらどうする?
万が一懲戒解雇になってしまっても、決して諦める必要はありません。
懲戒解雇から再就職できた体験談でもあるとおり、正社員として再起するチャンスは十分にあります。
もちろんハードルは決して低くありませんが、可能性がある限りトライし続けましょう。
まとめ:懲戒解雇になっても諦めなければ大丈夫!
懲戒解雇と言っても様々な理由があり、最も重い処分なだけに、会社としても相当慎重になります。
最終的には会社の判断によるものなので、やってしまった内容が同じでも、懲戒解雇に該当するかどうかは、ケースバイケースです。
もし筆者が言えることがあるとするなら、万が一懲戒解雇されてしまったとしても、決して諦める必要はない、ということ!
褒められた話ではないですが、心を入れ替えて必死に就活を頑張れば、全然チャンスはあります。
以下の記事も参考にしつつ、諦めずに再起を目指しましょう!