本記事では、前科の影響による入国制限について、わかりやすくまとめています。
- 前科があると海外旅行には行けないの?
- 前科があっても入国できる国を知りたい!
こんな疑問にお答えします。
筆者のキリオ(@kirio_desu)です。大変お恥ずかしい話ですが、筆者には逮捕歴と前科があります。その後は無事にホワイト企業に就職し、現在は経歴に不安がある方向けのキャリア支援を行っています。
前科があると、国によっては入国制限に引っかかり渡航できない恐れがあります。
そこで本記事では、海外のビザ申請に詳しい佐藤智代・行政書士に監修を受け、前科があっても入国できる国とできない国について整理してみました。
「執行猶予中」「略式起訴」「罰金刑」「不起訴」など個別ケースでの違いについても詳しくまとめています。
前科や逮捕歴の海外旅行、海外出張への影響が気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。
行政書士佐藤智代法務事務所代表。行政書士/保護司。福岡県行政書士会所属。登録番号 12401048。長崎県立女子短期大学英文科卒業後、アパレル会社での店長職や保育園での英語指導などの職を経て24歳の時にカナダへ留学のためわたり2年半滞在。カナダ横断一人旅、ドイツ一周一人旅を経て帰国。帰国後英会話学校に英会話講師として勤務し、その後学校運営や教務指導、人事に携わり結婚のため退職。2012年行政書士佐藤智代法務事務所開業。⇒詳細ページ
前科があっても入国できる国とできない国
それでは早速、前科があっても入国できる国と入国が厳しい国を具体的に紹介していきます。
ざっくり言うと…
- 今のところほとんどのヨーロッパやアジアではOK!
- アメリカ圏やロシア、ブラジルはビザ必要!
- 今後EU圏ではETIAS、イギリスではETA UKが導入される予定
- 韓国ではK-ETAは2025年より再開予定
こんな感じで理解すればOKです。
ビザが不要な国は、基本的にはパスポートさえあれば問題なく入国できると考えてもらって結構です。
ビザが不要な国
ビザが不要=前科があっても問題なく入国できる主な国は以下のとおり。
アジア
- インドネシア
- シンガポール
- タイ
- 韓国※
- 台湾
- 中国
- フィリピン
- ブルネイ
- ベトナム(ただし30日以内の再入国にはビザが必要)
- 香港
- マカオ
- マレーシア
- モルディブ
- モンゴル
- ラオス
※韓国は2024年12月まで一時的にK-ETAが不要となっています。
ヨーロッパ
西欧圏ならほとんどの国がOKです。
ただしEU圏はETIASを導入予定、イギリスはETA UKを導入予定です。
ビザが必要な国
逆に、海外旅行でもビザが必要になる国は以下のとおり。
アジア
- アフガニスタン
- イスラム国
- インド
- カンボジア
- 北朝鮮
- スリランカ
- ネパール
- パキスタン
- バングラデシュ
- 東ティモール
- ブータン
- ミャンマー
ヨーロッパ
- アゼルバイジャン
- タジキスタン
- トルクメニスタン
- ロシア
北米・南米
- アメリカ※
- カナダ(空港で入国する場合)
- プエルトリコ
- ブラジル
※アメリカは逮捕歴、犯罪歴がある方は原則ビザが必要
オセアニア
- オーストラリア※
- ナウル
- パプアニューギニア
※ETASで犯歴を申告後、カナダ同様に犯罪歴の内容や経年具合によってETASが許可される場合もあり。
中東
- イエメン
- イラク
- イラン
- オマーン
- カタール
- クウェート
- サウジアラビア
- シリア
- バーレーン
- ヨルダン
- レバノン
アフリカ
- アルジェリア
- アンゴラ
- ウガンダ
- エジプト
- エチオピア
- カメルーン
- ガーナ
- ギニア
- ケニア
- ガボン
- コモロ
- コンゴ
- コートジボワール
- ザンビア
- ジブチ
- ジンバブエ
- スーダン
- タンザニア
- ナイジェリア
- ニジェール
- ブルキナファソ
- ベナン
- マダガスカル
- マラウイ
- マリ
- モザンビーク
- リベリア
- ルワンダ
- 中央アフリカ
- 大リビア・アラブ
前科・逮捕歴がある人の海外渡航の注意点
前科や逮捕歴があっても海外旅行や出張には行けますが、ただし、一部の国では入国制限があります。
特にアメリカやカナダ、オーストラリアでは入国制限がかなり厳しいです。
なぜなら、入国前に電子渡航認証システムであるESTA、eTA ETA(旧ETAS)で犯罪歴の申告が必要となるためです。
これらは、外国人が入国する前に簡易的にあらかじめ検査する簡易ビザのようなものですが、電子渡航認証システムが認証されたからと言って入国が許可されるかと言えば決してそうではないので、注意してください。
それと、罪名によってはパスポートの発行自体が許されないケースもあるので要注意!
とはいえ、偽造パスポートで逮捕された、とかでなければ基本的にはパスポートの発行には問題ないので大丈夫です。ここから詳しく解説していきます。
前科・逮捕歴とパスポート制限の関係
そもそも逮捕歴や前科による海外渡航の制限は、日本の旅券法13条1項で定められています。
(一般旅券の発給等の制限)
第十三条 外務大臣又は領事官は、一般旅券の発給又は渡航先の追加を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合には、一般旅券の発給又は渡航先の追加をしないことができる。
一 渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者
二 死刑、無期若しくは長期二年以上の刑に当たる罪につき訴追されている者又はこれらの罪を犯した疑いにより逮捕状、勾こう引状、勾こう留状若しくは鑑定留置状が発せられている旨が関係機関から外務大臣に通報されている者
三 禁錮こ以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
四 第二十三条の規定により刑に処せられた者
五 旅券若しくは渡航書を偽造し、又は旅券若しくは渡航書として偽造された文書を行使し、若しくはその未遂罪を犯し、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百五十五条第一項又は第百五十八条の規定により刑に処せられた者
六 国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律(昭和二十八年法律第二百三十六号)第一条に規定する帰国者で、同法第二条第一項の措置の対象となつたもの又は同法第三条第一項若しくは第四条の規定による貸付けを受けたもののうち、外国に渡航したときに公共の負担となるおそれがあるもの
七 前各号に掲げる者を除くほか、外務大臣において、著しく、かつ、直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者(引用:e-Gov)
これを噛み砕くと、以下のようになります。
☑パスポートの発行制限
- 渡航先の国で入国制限されている人
- 懲役2年以上の罪の疑いで逮捕または起訴されている人(現在進行系)
- 禁錮以上の刑で執行猶予中、仮釈放中などの人(現在進行系)
- 旅券法違反の罪で罰せられた経験のある人
- パスポートや渡航書の偽造・未遂で有罪判決を受けた経験のある人
- 国援法を適用され外国から帰還した経験のある人
- 外務大臣と法務大臣が日本の利益・公安に著しく害すると判断した人
細かいことは省略すると…
- 現在進行系で逮捕・起訴されている人
- 執行猶予や仮釈放中の人
上記に該当する人は、パスポートが発行されない場合があります。
逆に言えば、現在進行形でなく、刑の執行や執行猶予が終わっていれば基本的には問題ないということ。
ただし、外務省のホームページに以下の記載があるとおり、発行までに時間がかかるのでご注意ください。
刑罰等関係欄の各事項のいずれかに該当する方については,ご本人より提出していただいた関係書類に基づき,パスポートの発給可否などにつき慎重に審査を行うため時間がかかります。(引用:外務省のホームページ)
あとは、渡航先の国によって対応が違うようです。
逮捕歴や前科は入国審査で聞かれる?
基本的に、入国審査で逮捕歴や犯罪歴の有無を聞かれることはありません。
ほとんどの国では、パスポートさえあれば、入国に必要な用紙に持ち物なんかを記入するだけでOKです。
ただし、アメリカ、カナダ、オーストラリアでは、本来日本含むビザ免除国の国籍者が申請するESTA、eTA、ETAで犯罪歴の有無を問われます。
在日米国大使館・領事館のホームページには、以下のような記載がありました。
私は過去に逮捕されたことがあります。ビザなしで渡米できますか?
いいえ。逮捕歴がある場合は、ビザ無しで渡米することはできません。あなたの渡米資格を判断するためには、ビザの申請が必要です。ビザ申請の際には、判決謄本・裁判記録・またはあなたの犯罪歴に関しての関連書類を全て提出しなければなりません。日本語の書類には英訳文が必要です。もしお手元にそれらの書類をお持ちでない場合は、あなたが手続きを受けた裁判所を管轄する地区検察庁にご自身で連絡を取って入手してください。審査には数週間から数ヶ月間を要しますので、予めご承知の上、渡米予定日に充分余裕をもって申請してください。なお、パスポートがお手元に届くまでは航空券の購入や旅行の最終決定は控えてください。
このように、アメリカでは逮捕歴がある場合ESTAでの渡航ができずビザが必要としています。
アメリカビザを申請する際には、面接時に不起訴処分告知書、略式命令/起訴状、調書判決、判決謄本などの書類と、その翻訳書類など過去の犯罪歴を証明する書類が必要になります。
なお、カナダやオーストラリアビザを申請する際は、裁判記録原本及び翻訳書類以外に、警察署から発行される警察証明の提出が必要です。
その上で、ビザの発行が許可された場合に限り、アメリカへの入国が許されるのです。
残念ながら罪名や量刑によっては生涯入国ができないとされ、ビザが許可されないこともあります。
これはハワイ、グアム、北マリアナ諸島でも当然、同じこと。
特に、グアムやサイパンは45日以内の観光目的であればESTAの申請が不要なので、犯罪歴を申告不要と考え、そのままパスポートのみで渡航してしまい、現地で入国拒否を受ける方は多いので要注意。
【ケース別】逮捕歴や前科がある人の海外旅行
- 俺は書類送検だったけどどうなの?
- 不起訴になったら問題ない?
こんな疑問も出てくるはずです。
というわけで、ここからは、個別のケースごとに海外旅行ではどういう扱いになるのか、細かく調べてみました。
元受刑者は海外旅行に行ける?
刑が終わっているわけですから、問題なくパスポートは発行されます。
アメリカ、カナダ、オーストラリアなどのビザが必要な国以外なら、普通に海外旅行に行ってOKです。
執行猶予中は海外旅行に行ける?
一般的にはパスポートの発行制限対象になるので、難しいです。(参照:前科によるパスポートの制限)
海外旅行は執行猶予が空けるまで我慢しましょう。
ただし執行猶予中は、条件を満たせば6か月間の期間限定のパスポートが発行されることもあります。
その場合は、アメリカ、カナダ、オーストラリア以外は渡航可能です※。
不起訴の場合は海外旅行に行ける?
不起訴なら基本的には問題なく海外旅行に行けます。
ただし、アメリカへの入国に際してはやはりビザの取得が必要になるようです。
「誤認逮捕でもESTAじゃダメなのっておかしくない?」と思うかもしれないですが、「嫌疑なし」または「嫌疑不十分」での不起訴処分であることを説明すれば、ビザは許可してもらえます。
一方「起訴猶予」での不起訴処分の場合、ビザ申請は罪の内容によっては却下されることもあります。
略式起訴の場合は海外旅行に行ける?
罰金刑などの略式起訴では、前科によるパスポートの制限に該当しないので問題ありません。
アメリカなどのビザが必要な国以外では、普通に海外旅行に行けます。
書類送検の場合は海外旅行に行ける?
書類送検と逮捕は、刑事手続き上拘束があったかどうかの違いだけであって、罪の軽重には関係ありません。
よって、書類送検かどうかではなく、書類送検後に起訴されたか不起訴だったかが重要。
起訴された場合は、判決が前科によるパスポートの制限に該当するかどうかで決まります。
アメリカ、オーストラリア以外の国なら、不起訴なら問題ないですし、略式による罰金刑でも普通に海外旅行に行けます。
まとめ:逮捕歴や前科が不安なら大使館に確認しよう
最後に、本記事の要点をまとめます。
☑本記事の要点まとめ
- 逮捕歴があっても海外旅行には行ける
- 現在進行系で仮釈放中や執行猶予中なら、パスポートが発行されない可能性が高い
- 刑を終えていれば問題なく海外旅行に行ける
- ただしアメリカやカナダ、オーストラリアでは原則ビザの取得が必要
上記の点を考慮しつつ、最新情報は各国の在日大使館に確認していただくと確実です。
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